口臭の原因はどこにある?口の中・胃・鼻で見分けるポイント

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「自分の口、においますか」と聞かれて、はっきり答えられる人はほとんどいません。
歯みがき指導のときにこちらから尋ねても、返ってくるのは「たぶん、あると思います」という曖昧な言葉です。

はじめまして、佐伯なおと申します。
大阪府内の歯科医院で歯科衛生士として働いて16年になります。
毎日10人前後の患者さんの口の中を見せてもらっていますが、口臭の相談は歯ぐきの出血と並んでよく持ちかけられるテーマです。

そして相談の入り口は、たいてい同じ言葉から始まります。
「これって、胃が悪いんでしょうか」。

正直に言うと、胃から来ている口臭はかなりの少数派です。
それでもこの思い込みは根強くて、原因の場所を確かめる前に胃薬を飲んだり、内科で「異常なしですね」と言われて行き場をなくしたりする方を何人も見てきました。
においの出どころを間違えたまま対策を続けても、労力のわりに何も変わりません。

この記事では、口臭の発生源が口の中なのか、鼻やのどなのか、それとも体の内側なのかを切り分ける手順をまとめました。
家で試せる比べ方と、それぞれの場所が原因のときに出るサイン、最終的にどの診療科へ行けばいいかまで書いています。
読み終わったら、まず自分の息を口と鼻で嗅ぎ分けてみてください。

口臭の8割以上は、口の中で作られている

原因の場所を探すときは、確率の高いところから当たるのが早道です。
そして口臭に関しては、その確率がかなり偏っています。

においの正体は揮発性硫黄化合物

厚生労働省のe-ヘルスネットは、口臭を口あるいは鼻を通して出てくる気体のうち、社会的容認限度を超える悪臭と定義しています。
そのうえで、口臭の80%以上は口の中に由来すると説明しています。

においのもとになっているのは、揮発性硫黄化合物(VSC)と呼ばれるガスです。
口の中の嫌気性菌が、はがれた粘膜やたんぱく質を分解するときに作り出します。
ライオン歯科衛生研究所の口臭の解説によれば、主な成分は硫化水素・メチルメルカプタン・ジメチルサルファイドの3つで、e-ヘルスネットでは硫化水素とメチルメルカプタンだけで約90%を占めるという報告も紹介されています。

硫化水素は卵が腐ったようなにおい、メチルメルカプタンは野菜が腐ったようなにおいと表現されます。
どちらも、ごく微量で人が不快に感じる強さのガスです。

最大の発生源は、舌の上の舌苔

では、そのガスはどこで作られているのか。
いちばん多いのは歯ではなく、舌の表面です。

鏡の前で「あー」と舌を出したとき、奥のほうが白っぽく、あるいは黄色っぽく見えることがあります。
これが舌苔(ぜったい)で、はがれた粘膜の細胞や食べかす、細菌が舌の細かい溝にたまったものです。
e-ヘルスネットの口臭の治療・予防では、口臭の87%が口の中に原因があるとしたうえで、生理的な口臭に対しては舌苔の除去が最も有効な予防法だと述べられています。

現場でも、歯はきれいに磨けているのに舌だけ手つかず、という方は珍しくありません。
歯ブラシは1日3回きっちり使っていても、舌に触れたことは一度もない。
道具と習慣の話でいえば、掃除の範囲から舌がまるごと抜け落ちている状態です。

歯周病があると、においの種類が変わる

もうひとつの大きな発生源が、歯周ポケットです。
日本臨床歯周病学会の口臭についての解説は、口の中の原因が口臭全体の90%以上を占めるとしたうえで、最大の要因は歯周病だと位置づけています。
歯周ポケットは酸素の届きにくい環境なので、嫌気性菌にとっては住み心地のよい場所になります。

歯周病が絡んでいるときは、メチルメルカプタンの割合が増えるとされています。
起床直後だけでなく一日中においが続く、家族から指摘される回数が増えた、といった変化があるなら、舌よりも歯ぐきのほうを疑ったほうがいいでしょう。
日本歯周病学会の歯周病Q&Aでも、口臭は歯周病の症状のひとつとして挙げられています。

「対処が必要な口臭」かどうかを、先に切り分ける

原因の場所を探す前に、もうひとつ確かめておきたいことがあります。
そもそも、それは対処が必要な口臭なのかという点です。

誰にでもある生理的口臭

日本口腔外科学会の口臭に関する解説は、起床直後・空腹時・緊張時に口臭が強まるのは唾液の分泌が減るためで、歯みがきや水分補給で改善するので治療は必要ないとしています。
朝起きたときのにおいを気に病んでいる方は多いのですが、これは健康な人にも等しく起きる現象です。

同じ学会の解説では、ニンニクやネギ、酒、たばこによる一時的なにおいも、治療の対象ではないと整理されています。
気になるなら食べる時間帯を調整する、というのが現実的な対応になります。

病気が原因の病的口臭

一方、時間帯に関係なく続くにおいは別の話です。
日本口腔外科学会は、病的口臭の90%以上は口の中に原因があるとして、歯周病・むし歯・歯垢・舌苔・唾液の減少・義歯の清掃不良・かぶせ物の金属の腐食などを挙げています。
ここには鼻やのどの病気も含まれています。

e-ヘルスネットが紹介している来院患者のデータを見ると、内訳の感覚がつかみやすくなります。
およそ3分の1が生理的口臭、3分の1が歯周病由来で、全身の病気が原因だったのは1%あまりでした。
つまり口臭を訴えて歯科を訪れた人のうち、体の内側の病気にたどり着くケースは、ごく一部にとどまります。

実際には口臭がない「仮性口臭症」も多い

もうひとつ知っておいてほしいのが、検査をしても口臭が見つからない場合があることです。
日本歯科医師会が運営するテーマパーク8020の口臭症の解説では、口臭症を真性口臭症・仮性口臭症・口臭恐怖症の3つに分類しています。

分類状態主な対応
真性口臭症(生理的)起床時や空腹時など、誰にでも起こる範囲のにおい舌の清掃と生活リズムの調整
真性口臭症(病的)歯周病や鼻・のどの病気、全身疾患が背景にある原因になっている病気への対応
仮性口臭症本人は強く訴えるが、検査では社会的容認限度を超えるにおいがない検査結果の丁寧な説明
口臭恐怖症上記への対応をしても訴えが変わらない心理面からの支え

仮性口臭症の方に「においはありませんでした」と伝えても、その場ですぐには受け止めてもらえないことがあります。
本人にとっては何年も抱えてきた不安なので、数値で示されただけでは気持ちが追いつかないのだと思います。
それでも、測ってみるという一手間には意味があります。
原因の場所を探し続けるループから、いったん降りられるからです。

口の中・鼻・体内を見分ける、いちばん確実な手順

ここからが本題です。
においの出どころを切り分ける方法は、実はとてもシンプルで、道具もいりません。

鼻をつまんで口から、口を閉じて鼻から

MSDマニュアル家庭版の口臭の項目には、医師が行う判別の手順が具体的に書かれています。
患者に鼻から約10センチの距離で、まず鼻をつまんで口から息を吐いてもらい、次に口を閉じて鼻から息を吐いてもらう。
その2つを嗅ぎ比べる、という方法です。

理屈はわかりやすいはずです。
口の中で作られたにおいなら口から出る息に濃く含まれ、鼻や副鼻腔で作られたにおいなら鼻から出る息に濃く含まれます。
血液に溶けて肺から出てくるにおいなら、どちらの息にも同じように混ざります。

判定の読み方

同じMSDマニュアルは、判定の目安を次のように示しています。

強くにおうほう考えられる発生源
口から吐いた息口の中(舌苔・歯周病・むし歯・清掃不良の義歯など)
鼻から吐いた息鼻や副鼻腔(副鼻腔炎、鼻の中の異物など)
どちらも同じくらい体の内側や肺から来ている可能性

この切り分けができるだけで、次に向かう場所が変わります。
口からのほうが強ければ歯科、鼻からのほうが強ければ耳鼻咽喉科、どちらも同程度なら内科という順番が立ちます。

自分ひとりで試すときのコツと限界

ただ、正直に言うと、自分の息を自分で嗅ぐのは簡単ではありません。
人の鼻は同じにおいをすぐ嗅ぎ慣れてしまうので、自分の口のにおいには最初から順応してしまっています。

家でやるなら、次のような手順にすると差がわかりやすくなります。

  • きれいなコップかポリ袋を用意する
  • 鼻をつまんで、口から息をコップの中に吐き出す
  • すぐ嗅がずに手のひらでふたをして、いったん深呼吸してから嗅ぐ
  • 別のコップかポリ袋に持ち替え、今度は口を閉じて鼻から息を吐き出す
  • 同じように一呼吸おいてから嗅ぎ、2つを比べる

条件はできるだけそろえてください。
起床直後や空腹時は誰でもにおいが強まるので、その時間帯だけで判断すると生理的口臭を病気と勘違いします。
食後2時間ほど経った落ち着いた時間帯に、歯みがきやマウスウォッシュを使う前の状態で試すのが目安です。

それでも、この自己チェックはあくまで見当をつけるための手順です。
においの有無や強さを客観的に決めるものではありませんし、これで病気を判断できるわけでもありません。
はっきりさせたいときは、専用の機器で揮発性硫黄化合物の濃度を測ってもらうほうが確実です。

口の中が原因のときに出ているサイン

嗅ぎ分けで「口からのほうが強い」となった場合、確かめる場所は3つに絞れます。

舌の奥に、白い苔がついていないか

まず舌です。
明るい場所で鏡に向かい、舌を軽く出してみてください。

見るのは先端ではなく、奥のほうです。
舌苔は喉に近い側から厚くなりやすいので、手前だけを見て「きれいだ」と判断すると見落とします。
白や黄色の膜のようなものが広くついていたら、においの発生源としては最有力候補になります。

ただし、舌が薄くうっすら白いのは正常な状態です。
まったく苔がないつるつるした舌のほうが、別の心配が出てくることもあります。
ここは「ゼロにする」ではなく「厚く積もらせない」という考え方でいてください。

フロスのにおいと、歯ぐきからの出血

次に歯と歯ぐきです。
デンタルフロスを歯と歯のあいだに通して、抜いたあとの糸のにおいを嗅いでみてください。

ある1か所だけ明らかににおう、糸が引っかかる、抜いたときに血がつく。
こうした場所があるなら、そこで細菌が増えているか、詰め物のふちが合っていない可能性があります。
私自身、衛生士になりたての頃に歯周ポケット4mmと言われて落ち込んだことがありますが、そのときもフロスの一部分だけがはっきりにおっていました。

歯ぐきからの出血は、口臭とセットで現れやすいサインです。
血液そのものもにおいのもとになりますし、出血するということは歯ぐきに炎症が起きている証拠でもあります。

唾液が減っていないか

3つめは唾液です。
唾液には口の中を洗い流す働きがあるので、量が減ると細菌が増えてにおいが強まります。

朝起きたときに口の中がねばつく、水を飲まないと長く話しにくい、口を開けて寝ていると指摘されたことがある。
こうした心当たりがある方は、口の乾燥がにおいを底上げしている可能性があります。
薬の副作用で唾液が減ることもあるので、常用している薬がある方は歯科でも伝えておいてください。

鼻・のどが原因のときに出ているサイン

「鼻からのほうが強い」と感じた場合、あるいは口の中を整えてもにおいが残る場合は、鼻とのどを疑います。

副鼻腔炎(蓄膿症)と後鼻漏

副鼻腔炎は、頬や額の奥にある空洞に炎症が起きて、膿や粘っこい分泌物がたまる病気です。
徳島県医師会のサイトに掲載されている耳鼻咽喉科医のコラム副鼻腔炎と口臭では、副鼻腔にたまった魚や卵が腐ったようなにおいの鼻汁や膿が吐く息に混じって口臭になる、と説明されています。
就寝中にその分泌物がのどへ流れ落ちるため、朝のにおいが特に強く出やすくなります。

鼻づまりが続いている、鼻水が黄色や緑がかっている、のどの奥に痰が張りついている感じがある。
このあたりが重なるなら、歯科より先に耳鼻咽喉科に行ったほうが早く片づきます。

扁桃にできる膿栓(臭い玉)

のどの奥、扁桃の表面に白や黄白色の小さな塊が見えることがあります。
これが膿栓で、扁桃陰窩というくぼみに、はがれた粘膜や細菌の死骸、食べかすがたまったものです。
池袋ながとも耳鼻咽喉科の扁桃膿栓の解説によると、大きさは1〜5mm程度が多く、つぶれると硫化水素やメチルメルカプタンなどの強いにおいのガスが出るとされています。

気になって綿棒やピンセットで取ろうとする方がいますが、これはやめてください。
同じ解説でも、粘膜を傷つけて出血や炎症を起こす危険、つぶすことで口の中ににおいが充満する点、強い咽頭反射で嘔吐してしまう可能性が挙げられています。
安全にできるのは濃いめのうがいまでで、それ以上は耳鼻咽喉科で吸引してもらうのが確実です。

口呼吸が、口と鼻の両方を悪くする

鼻がつまっていると、人は自然と口で呼吸するようになります。
口呼吸が続くと口の中が乾き、唾液の洗い流す力が落ちて、舌苔も膿栓もできやすくなります。

つまり鼻の問題は、鼻由来のにおいを作るだけでなく、口の中の環境まで悪くします。
口の中をどれだけ丁寧にケアしてもにおいが下がらない方の中には、この経路が背景にあるケースがあります。

「胃が原因」と言われがちだけど、実際は少ない

最後に、いちばん相談の多い胃の話です。

胃の中のにおいは、普段は上がってこない

食道と胃のつなぎ目は、普段は閉じています。
ゲップをしたときや吐き気があるときには一時的に開きますが、常に胃の中の空気が口まで上がってくる構造にはなっていません。
胃の不調がそのまま息のにおいになる、というイメージは、実際の体のつくりとは少しずれています。

先に紹介したe-ヘルスネットの数字を思い出してください。
口臭を訴えて来院した人のうち、全身の病気が原因だったのは1%あまりでした。
それに対して口腔由来は80%以上です。
胃を疑う前に口の中を確かめる順番のほうが、圧倒的に当たりやすいわけです。

それでも消化器が関わるケース

もちろん、ゼロではありません。
胃酸が食道へ逆流する状態では、すっぱいにおいが喉から上がってくることがあります。
胸やけ、げっぷの増加、横になると症状が強まるといった特徴があるので、心当たりがあれば消化器内科に相談してください。

ピロリ菌の感染も、胃の炎症を通じてにおいに関わると説明されることがあります。
ただ、ピロリ菌の検査と除菌は胃炎や胃がんのリスクを考えるうえで大事なもので、口臭対策として最初に手をつける項目ではありません。
順番としては、口の中、鼻とのど、逆流の症状、そのあとに全身という並びで見ていくのが現実的です。

全身の病気で、特徴的なにおいが出ることもある

日本臨床歯周病学会の解説では、全身疾患に伴う口臭の例として、糖尿病のアセトン臭や肝硬変のアンモニア臭が挙げられています。
MSDマニュアル家庭版でも、肝不全や腎不全、糖尿病でそれぞれ特徴のあるにおいが出るとされています。

これらは口臭だけが単独で現れる病気ではありません。
強い口の渇きや体重の変化、だるさなど、ほかの症状を伴うのが普通です。
逆に言えば、口臭以外にまったく変化がないのなら、まずは体の内側より口と鼻を見たほうが早いということになります。

見当がついたら、どこへ行き、何から変えるか

原因の場所に見当がついたら、次は行き先を決めます。

まずは歯科から、が効率的

嗅ぎ分けの結果がはっきりしなかった場合でも、最初の一歩は歯科でいいと思っています。
確率的にいちばん多いのが口の中であることに加えて、舌苔の量も歯周ポケットの深さもその場で確認できるからです。
歯科で「口の中に原因は見当たりません」と言われれば、そこから耳鼻咽喉科や内科へ進む判断もしやすくなります。

MSDマニュアル家庭版では、発熱や膿のような痰・鼻水がある場合はすぐに受診を、口の中に見慣れない部分を見つけた場合は数日以内の受診を、と目安が示されています。
においだけで、ほかに変わったことがなければ、通常の受診でかまいません。

今日から変えられること

行き先を決めるのと並行して、セルフケアも少し変えてみてください。
e-ヘルスネットとライオン歯科衛生研究所の解説を踏まえると、舌の清掃は次のような形になります。

  • 1日1回、起床時に行う
  • 歯ブラシではなく、専用の舌ブラシか舌クリーナーを使う
  • 奥から手前へ、軽い力で数回引く
  • 力を入れてこすらない。舌の粘膜を傷つけると、かえって口臭のもとになる
  • 頻繁にやりすぎない。回数を増やすより、当て方をそろえるほうが効きます

歯みがきのほうも、フロスか歯間ブラシを1日1回は通してください。
歯と歯のあいだは歯ブラシの毛先が届かない場所で、ここを放っておくと、においだけでなく歯ぐきの炎症もそのまま残ります。

そして水分です。
口の乾燥を放置したままケアだけ足しても、効きは頭打ちになります。
こまめに水を飲む、よく噛んで食べる、その2つで唾液の出方はかなり変わります。

やらなくていいこと

反対に、力を入れなくていいこともあります。
マウスウォッシュやスプレーは一時的ににおいを抑えますが、舌苔や歯周ポケットの細菌がなくなるわけではありません。
使うのは構いませんが、原因を探す代わりにはならないと思ってください。

強い香りのタブレットで上書きするのも、同じ理由でおすすめしません。
においが混ざって、かえって周囲に気づかれやすくなることがあります。

まとめ

口臭の原因を探すときは、いきなり胃を疑わないでください。
確率がいちばん高いのは口の中で、しかもその中心は歯ではなく舌です。

切り分けの手順はシンプルです。
鼻をつまんで口から吐いた息と、口を閉じて鼻から吐いた息を比べる。
口からのほうが強ければ歯科、鼻からのほうが強ければ耳鼻咽喉科、どちらも同じくらいなら内科という順番になります。

起床直後や空腹時のにおいは、誰にでもあるものです。
そこまで対策の対象に入れてしまうと、終わりのない話になります。
気にするべきは、時間帯に関係なく続くにおいのほうです。

まず1か所だけ変えてみてください。
明日の朝、舌の奥を鏡で見るところからで十分です。
そのうえで3か月に1回の定期検診を組み合わせれば、自分の口の状態を人に聞かなくても把握できるようになります。