15歳以上の日本人のうち、4mm以上の歯周ポケットがある人は47.8%。
厚生労働省が2024年に行った調査の結果で、ほぼ2人に1人という数字です。
歯科衛生士の佐伯なおです。
歯周病は痛みが出にくく、歯ぐきから血が出ても「そのうち治まる」と見過ごされがちです。
この記事では、家でできる10項目のセルフチェックと、当てはまった数ごとの目安、気づいたときにまずやることをまとめました。
歯周病は「気づいたときには進んでいる」病気
15歳以上の約半数に、4mm以上の歯周ポケットがある
厚生労働省の「令和6年歯科疾患実態調査 結果の概要」によると、4mm以上の歯周ポケットがある人は15歳以上で47.8%でした。
年代別に見ると、30代前半で27.2%、40代前半で28.6%なのに対して、40代後半では41.4%、50代後半では54.0%と、40代の後半から一気に増えていきます。
歯ぐきから出血がある人も、10歳以上の42.9%にのぼります。
仕事や子育てで忙しく、歯医者から足が遠のきやすい世代が、ちょうど増え始める入り口に立っていることになります。
歯周ポケットは、歯と歯ぐきの間にある溝のことです。
健康な歯ぐきなら溝は浅く、炎症が続いて歯を支える組織が壊れていくと、少しずつ深くなっていきます。
この調査でも、深さ4mm以上を「歯周ポケットがある」とする目安にしています。
痛みが出にくいから、セルフチェックが役に立つ
e-ヘルスネットの「歯周疾患の自覚症状とセルフチェック」でも、歯周病は初期の段階では、自分で気づくような症状がなかなか出ないと説明されています。
私自身、衛生士になりたての頃に検査で歯周ポケット4mmと言われ、まったく自覚がなかったことに驚きました。
毎日人の口の中を見ている仕事でもそうだったので、ふだん口の中をじっくり見ない方が気づかないのは当然です。
だからこそ、「痛くなったら行く」ではなく、小さなサインを自分で拾う習慣が役に立ちます。
歯周病は、静かに進む家の水漏れに似ています。
天井にしみが出てからでは、修理が大がかりになってしまいます。
歯周病のセルフチェック10項目
日本臨床歯周病学会の「歯周病とは?」のページに載っているチェック項目をもとに、確かめ方を添えて10項目にまとめました。
当てはまるものを数えてみてください。
口全体のサイン(3項目)
- 口臭を人から指摘された、または自分で気になる
- 朝起きたとき、口の中がネバネバする
- 歯みがきのあと、歯ブラシの毛先に血がつく、すすいだ水に血が混じる
口臭や朝のネバつきは、歯周病の原因になる細菌が増えると出やすくなる変化です。
ただ、自分の口臭は慣れてしまって分かりにくいので、家族に聞いてみるか、後で紹介するフロスのにおいで確かめるのが現実的です。
出血は、歯ブラシを流水で洗う前に毛先を見るか、吐き出した泡の色を見ると気づきやすくなります。
泡がうっすらピンク色になっている程度でも、出血に数えてください。
毎回同じ場所から出るなら、そこが炎症の中心です。
歯ぐきのサイン(3項目)
- 歯ぐきが赤く腫れている
- 歯ぐきが下がって、歯が長くなったように見える
- 歯ぐきを指で押すと、血やうみが出る
健康な歯ぐきは薄いピンク色で引き締まり、歯と歯の間にきゅっと入り込んでいます。
赤っぽくなっていたり、歯と歯の間の歯ぐきが丸くふくらんでいたりしたら、炎症が起きているサインです。
歯ぐきが下がっているかどうかは、歯の根元の色で見分けられます。
歯の頭の部分より黄色っぽい帯が見えていたら、それは本来歯ぐきに隠れていた根の部分です。
数年前の笑顔の写真と見比べてみると、変化に気づくこともあります。
歯のサイン(4項目)
- 歯と歯の間に食べ物がよくはさまる
- 歯が浮いたような感じがする
- 歯並びが変わった気がする
- 歯が揺れている気がする
食べ物がはさまりやすくなるのは、歯ぐきや歯を支える骨が減って、歯と歯の間にすき間ができてきたときによく起こります。
以前はきつかったフロスが、最近すっと通るようになった場所があれば要注意です。
歯が浮いたような感じは、疲れているときや寝不足のときに出やすく、噛んだときに歯が少し沈むような違和感として現れます。
歯の揺れや歯並びの変化は、歯周病がかなり進んでから出てくることが多いサインです。
前歯のすき間が以前より広がった、歯が少し前に出てきた気がするといった変化も、ここに含めて考えてください。
当てはまった数で見る目安
1〜3個なら軽いうちに、4個以上なら早めに歯科へ
同じ学会のページでは、当てはまった数ごとに次のような目安が示されています。
| 当てはまった数 | 目安 |
|---|---|
| 0個 | 症状がなくても進むことがあるので、年に1回は歯科検診を受ける |
| 1〜3個 | 歯周病の可能性がある。軽いうちに歯科で治療を受ける |
| 4〜5個以上 | 中等度以上に進んでいる可能性がある。早めに歯科で治療を受ける |
数に関係なく、歯ぐきからうみが出る、歯が揺れるといったサインは、1つだけでも早めに受診してください。
進んだ段階で出やすい変化なので、様子を見ている間にも状態は変わっていきます。
0個でも安心できない理由
チェックが0個でも、歯周病がないとは言い切れません。
先ほどの私の4mmも、まさに何も感じていない状態で見つかりました。
セルフチェックは「すぐに行くべきか」を判断するための道具で、「行かなくていい」を決める道具ではないと考えておいてください。
歯周病が進みやすい条件が重なっていないか
チェックの数とあわせて、歯周病が進みやすい条件がそろっていないかも見ておきましょう。
日本臨床歯周病学会は、次のようなことを歯周病を進める要因として挙げています。
- たばこを吸う
- 糖尿病がある
- 歯ぎしりや食いしばりがある
- 合っていない詰め物やかぶせ物、入れ歯がある
- ストレスが多い、食事の時間が不規則
- 口で呼吸することが多い
当てはまる方は、セルフチェックの数が少なくても進みやすい傾向があります。
一度、歯科で検査を受けておくと安心です。
セルフチェックの精度を上げるコツ
明るい場所で、鏡と指を使う
チェックは、洗面所の明るい照明の下で、鏡を使って行ってください。
唇を指で軽くめくり、歯と歯ぐきの境目を1本ずつ見ていくと、腫れや赤みに気づきやすくなります。
奥歯の歯ぐきは、スマートフォンのライトで照らすとよく見えます。
左右や上下で、歯ぐきの色や形を見比べるのもおすすめです。
同じ人の口の中でも、磨きにくい場所だけ赤く腫れていることはよくあります。
フロスを通すと、隠れたサインが見える
歯ブラシでは出血しなくても、フロスを通すと血が出る場所があります。
歯と歯の間は歯ブラシの毛先が届きにくく、汚れが残って炎症が起きやすい場所です。
フロスを通したあとに血がついていないか、においがしないかを確かめると、歯ブラシだけでは分からない炎症に気づけます。
月に1回、同じ条件で記録する
セルフチェックは、一度やって終わりにするより、続けて変化を見るほうが役に立ちます。
月に1回、歯ブラシを交換する日などに合わせて、当てはまった項目の数をメモしておいてください。
気になる場所の歯ぐきを、同じ明るさ・同じ角度でスマートフォンで撮っておくと、腫れが引いたのか、下がってきたのかを比べられます。
検診のときにその写真を見せてもらえると、私たち衛生士もとても助かります。
当てはまったら、まずやること
出血しても、歯ブラシを当てるのをやめない
出血に気づくと、怖くなってその場所を避けて磨く方がいます。
けれど出血の多くは、汚れがたまって歯ぐきが炎症を起こしているサインで、避けるとかえって汚れが残ります。
やわらかめの歯ブラシで、毛先を歯と歯ぐきの境目に当て、小さく動かして磨いてください。
出血の原因の見分け方は「歯ぐきから血が出るのは磨きすぎ?磨き足りない?原因の見分け方」で、歯ぐきの状態に合う歯ブラシは「歯ブラシの選び方|ヘッドの大きさ・硬さ・毛先の形で何が変わる?」で詳しく書いています。
歯科で歯周ポケットの検査を受ける
セルフチェックで分かるのは、あくまで「可能性」です。
歯周病かどうか、どこまで進んでいるかは、歯科で歯周ポケットの深さや出血、歯の揺れを測り、必要に応じてレントゲンで骨の状態を見て、はじめて分かります。
歯石は歯ブラシでは取れないので、たまっていれば歯科で取り除いてもらいます。
歯周ポケットの検査は、目盛りのついた細い器具を歯と歯ぐきのすき間にそっと入れて、1本の歯につき何か所か深さを測るものです。
炎症がある場所では少しチクッとすることもありますが、麻酔が必要なほどの痛みはほとんどありません。
結果は数字で残るので、次回の検査で良くなったのか悪くなったのかがはっきり分かります。
受診先に迷ったら、予防に力を入れている医院を選ぶと、治療が終わったあとの定期的なケアまで相談しやすくなります。
予防歯科に力を入れている医院の一例として、大阪府堺市のひきしょう歯科クリニックの予防歯科のページも参考になると思います。
検査のあと、どのくらいの間隔で通えばよいかは「歯科の定期検診は3か月ごと?間隔の決まり方と内容」でまとめています。
まとめ
歯周病は、15歳以上の約半数に4mm以上の歯周ポケットが見つかるほど身近な病気なのに、初期はほとんど自覚症状がありません。
口臭や朝のネバつき、歯みがきのときの出血、歯ぐきの腫れや下がり、食べ物のはさまりなど、10項目のうち1つでも当てはまったら、早めに歯科で検査を受けてください。
チェックが0個でも、それだけで安心しないことが大切です。
まず1か所だけ変えてみてください。
今夜の歯みがきのあと、歯ブラシの毛先と吐き出した泡の色を見る。
その習慣を続けながら3か月に1回の定期検診を受けていれば、歯周病のサインを早いうちに拾えます。